2011年12月20日

シリーズ社会科見学18 国史跡/金山城跡-群馬県太田市(その1)

太田市は、群馬県南東部にある人口約22万人の市で、高崎市、前橋市に続く群馬県第三の都市です。

富士重工業(「SUBARU」)の企業城下町で、北関東随一の工業都市です。


金山城跡内にある
富士重工業の前身、中島飛行機の創業者
中島知久平の胸像
金山城跡のすぐ南側にある旧中島航空機発祥の地

市民の立場から稲村城跡の国史跡指定を目指し、その運動を進めてきた里見氏稲村城跡を保存する会が、他地域での国史跡の保存と活用について学習するため、12月18日(日)に、群馬県太田市の国史跡「金山城跡」を巡見したのにあわせて、稲村城跡の地権者の皆さん、地元稲区の皆さん、保存する会の皆さん、そして市民の皆さんと一緒に、国史跡「金山城跡」を社会科見学しました。




金山城跡は太田市の北西部に位置し、独立丘陵となる金山(標高239m)の四方にのびる尾根を利用して造られた山城です。


金山城跡からの眺望(南側)

山頂部の実城を中心として北には北城、西方には西城、また南には八王子山ノ砦などが配置されています。

国史跡になったのは古く、昭和9(1934)年に山頂部周辺の18.3haが指定され、その後、平成14年9月20日に追加指定され、現在の国史跡指定範囲の面積は97.8haになっています。

全国的にみても規模の大きな山城です。


国史跡「金山城跡」見学の起点として、平成21年5月につくられたのが、史跡金山城跡ガイダンス施設・金山地域交流センターです。

建物外壁は、金山城の石垣をモチーフとして、
幾何学的パターンで再構成した割肌仕上の石が使われています。

このガイダンス施設は、国史跡「金山城跡」への興味や関心を深めるための歴史学習の場、また、自然と親しめる憩いの場として建設され、体験学習や歴史講座、ギャラリー展示などが行われ、コミュニティールームなどの部屋もあります。


ガイダンスルーム入口
ガイダンスルームの展示
情報サロン。金山城に関する図書の閲覧、発掘調査情報を知ることができます。


このガイダンス施設で、金山城の概要を学ぶことができました。
整理すると、次のようになります。


・金山城は、平安時代末期の新田氏の防御施設として構築されたとも伝えられていること。
・金山城の歴史は、文明元(1469)年に、新田氏の後裔岩松家純の命により築造されたことに始まったと考えられていること。
・最初に金山城主となった岩松氏は、下剋上によって横瀬氏(後に「由良」と改姓)と交代し、その後北条氏の支配となったが、豊臣秀吉の小田原北条氏討伐による敗北によって、金山城も天正18(1590)年に廃城となったこと。
・現在整備されている金山城跡は、戦国時代の後半に造られた城内を再現したもので、史跡内には約120年もの間落城することのなかった金山城の痕跡が、石垣や堀切、土塁として今でも残されていること。

ガイダンス施設で、基礎知識を学んだ後、いよいよ金山城跡の巡見です。


金山城跡ボランティアガイドの皆さんが案内をしてくれました。

金山城跡の特徴は、石垣や石敷きが多用されていることで、従来、戦国時代の関東の山城に本格的な石垣はないとされきた城郭史の定説が、金山城跡の発掘調査で覆されました。

発掘調査の成果に基づいて、城の出入り口であり、敵の侵入を防ぐため、豪壮かつ堅固に作られた大手虎口(こぐち)や、物見台下の虎口、石積された土橋などが復元されていました。


大手虎口

物見台下の虎口(こぐち)と石積された土橋(どばし)

その一方で、金山城に関する当時の絵図などは全く残っていないため、発掘調査によって得られた情報を分析し、他の類例と照らし合わせて、建物の想定復元が進められています。


想定復元された馬場曲輪(ばばくるわ)の建物
ここは大手虎口を守る兵が待機したと考えらている場所です。

稲村城跡を保存し、市民の誇りとして活用していくためには、当然のことながら、学術的に十分裏付けられた証拠にもとづく復元整備が必要になります。

太田市が、金山城跡の保存整備に本格的に着手したのは、昭和52(1977)年のことです。
以下、その歴史をご紹介します。

昭和52年度   保存管理計画策定
昭和60年度   保存管理計画再策定
昭和63年度   整備基本構想策定
平成4年度    整備基本計画策定(基本設計含む)
平成5年度~  ~現在/毎年翌年度分を作成
平成6年度~  史跡整備事業(~現在) ※平成12年度 

史跡整備には、数十年単位の時間と予算、そしてマンパワーが費やされていることを、金山城跡の事例からも知ることができます。

 (その2につづく)


◆ 関連記事

遺跡の保存・活用のための発掘調査」(12/17)
群馬県太田市の国史跡「金山城跡」の巡見が開催されます。(12/3)
「稲村城跡」の国史跡指定答申について (11/18)


◆ シリーズ社会科見学

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